ようやくアップできました。コードギアスSSです。今回はカレンが主役。作中の時間は、第12話「キョウトからの使者」と第13話「シャーリーと銃口」の間を想定しています。舞台は騎士団のアジト。カレンとC.C.のあれこれが見たいなぁという欲求から書いたものです。
アニメ本編に準じているものの、もちろん内容は完全に自分の想像なのでご注意を。
①ということで②以降も予定してはいますが、時系列はバラバラになる可能性があります。突然、第03話「偽りのクラスメート」中のことを書くかも。その辺りは気ままにやっていきます。
どれほどの分量にすればいいかわからず、少々戸惑ってしまいました。書き始めると早かったんですが。まぁ、内容は初回ということで多めに見てください。こんな感じのものを、定期的にUPしていければなぁと。
近々web拍手を設置するつもりですので、感想等ありました是非ともどうぞ。
……いや、その前に、SS読んでくれる人っているのか?
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コードギアス 01.カレンの日常① 「騎士団にて」
キョウトの代表に謁見して数日後。
騎士団のみんなは、どこか浮き足立っているようだった。
無理もない。
レジスタンスにとって最大の支援者で知られるキョウト、その全面協力が約束されたのだから。
わたしたちの活動が、「キョウト」によって支えられる……。
この事実が、どれほど心強いか。
黒の騎士団と名乗る以前では――ゼロが現れるまでは、考えられないことだった。
十分な資金。武器。ブリタニアを相手にした、「戦争」。
いつか、玉城が言っていた。
これで俺たち騎士団は、名実ともに……。
(……でも)
素直に喜ぶことのできない自分がいる。
このまま、わたしたちはどこへ向かうのだろう。
そんな不安も、もちろんある。
けれど……それよりも。
『日本人ではない』
アジトの中、歩を進めるわたしの脳内に、あのときのゼロの言葉が蘇った。
騎士団のメンバーでは、わたしを含めて、三人しか知らないこと。
ゼロは、日本人ではない。
(どういうこと……?)
今まで、考えなかったわけじゃない。
ゼロが顔を隠す訳。特別な事情。
それが、こんな形で示されるなんて。
日本人でない人物が、わたしたちを率いて、ブリタニアと戦っている。
その事実。
(ショック、だった……)
正直に言えば。
わたしたちと、志は同じではないかもしれない。
そんなことすら考えてしまえるから。
ゼロの、目的。成さねばならぬ理由。
それはいったい、何なのだろう。
考えれば考えるほど、一つの想像が、頭をもたげてくる。
ゼロはそのために、わたしたちを……。
(……ダメだ!)
やめよう。
ゼロの正体が何であれ、ゼロが、騎士団のリーダーであることに変わりはない。
ゼロなら、これからも、わたしたちを導いてくれる。今までの結果が、そう示している。
わたしはただ、わたしに出来ることをしていくだけ。
わたしの意思で。
わたしの力で。
「…………」
思考と同時に、わたしは足を止めた。
目的地。ゼロの部屋。
紅蓮の整備が終わったことを、報告しなければならない。
ドアをノックしようとして……。
寸前、手が止まった。
(今日も……いるかもしれない)
頭の中の引っかかり。
気がかりなことは、もう一つ。
(あの人……)
洞窟でゼロの傍にいた、あの人。
先日、ゼロがみんなに紹介した、あの人。
あれ以来、時々、ゼロの部屋にいることがある。
ゼロと、二人きりで。
(C.C.……だったっけ)
変な名前。
彼女は、ゼロにとって何なんだろう。
ゼロは、「大事な仲間」と言っていた。
仲間? それも、大事な?
わたしたちにだって、言ってくれたことないのに、そんなこと。
キョウトの代表に会ったときだって、あの人がゼロの身代わりをしていた。
普段は立ち入り禁止のゼロの部屋に、何度も入っている。
わたしたちを差し置いて。
(どういうこと……?)
彼女は知っているのだろうか、ゼロの正体を。
誰も知らない、ゼロの素顔を。
その、目的を。
あの人は……。
ゼロとあの人は……。
――ガチャ。
「うわっ」
ぐるぐると渦巻く感情に翻弄されていると、突然、目の前の扉が開いた。
中から現れたのは、あの人。
「し、C.C.……さん?」
「何だ、カレンか」
いつもの奇妙な白い衣服をまとったC.C.は、怪しげな微笑みを浮かべている。
わたしを見つめて彼女は、
「聞き耳でも立てていたのか?」
「……してません」
「ふふ。冗談だ」
はっきり言って嫌いだ、この人は。
何だか、嫌いだ。
「整備完了の報告に来ました。……ゼロは?」
「中にいる。伝えておいてやろうか?」
「……はい」
やっぱり、嫌いだ。
何となく、嫌いだ。
ここからだと、ゼロの後ろ姿しか見えないというのに。
「あぁ、そうだ、カレン」
「何ですか……?」
だいたい、どうして呼び捨てにされなければいけないんだろう。
騎士団の仲間ではないはずなのに。
見た目は、わたしと同じか、少し年下なのに。
「整備が終わったのだろう? 手が空いているのなら、使いに行ってくれ」
「……お使い?」
「そうだ」
「わたしが?」
「他に誰がいる」
「別にわたしじゃなくても……」
「目の前にいるのはお前だ。心配するな。街に行けばすぐに買える」
そう言ってC.C.が手渡したのは、小さな紙片。
何か、字が書いてある。
「ま、待てC.C.。カレンに行かせるのか?」
文字に目を走らせている最中、聞こえてきたのは、ゼロの声。
珍しい。
ブリタニアとの戦いでさえ冷静なゼロが、やけに慌てている。
「何か問題があるのか?」
「あるに決まっている」
「仕方なく頼んでいるんだ。私に行くなと言ったのはお前だろう」
「それはそうだが……」
「何なら、お前が買いに行くか」
「バカなことを言うな! そもそも、買いに行く必要などないだろう。服ならオ……私のものが、」
「お前の服など、ブカブカで着られるか。たまには着飾ってもいいだろう。不満か?」
「そういう問題ではなくてだな……」
「…………」
な、何この会話……。
まるで入っていけない。
これが、あのゼロなの?
服って何? 着飾るって何?
それに今、ゼロのことを「お前」って。
お前って……!?
「……あぁ、すまないな、カレン。うるさいやつは黙らせておく。行け」
「え、え……?」
「まったく、あいつときたら……」
――バタンッ。
疑問符を掲げることができたのは、僅か数瞬。
気が付くと、C.C.によって、扉が閉じられていた。
後に残されたのは、わたしと、一枚のメモ用紙。
手元のそれに目を落とす。
ボールペンの走り書き曰く、
フリルの付いたドレス
「わたしが買うの? これ……」
ぎゅっと、紙を握り締める。
お腹の底から、暴力的なまでの感情が湧き上がってくる。
ゼロの正体。目的。
そんな陰鬱とした考えは、どこかへ消え去っていた。
(C.C.……)
あの人への、もやもやとした思いによって。
END
コードギアスはこのように、キャラの心情や設定の「隙間」を埋めやすい作品だと思うんです。本編に忠実ってのが自分のSSのモットーでもあるので、そういう意味では非常に二次創作に適している作品であるかと。
カレンについては特に、状況による感情の変化が大きいので、書いていて楽しいですね。