ペット 空影 -karakage- 忍者ブログ
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2024/11/22 18:11 |
【SS】 パルフェ 02-2.「仁が右手をケガしたら (中編)」

 なかなか集中できず、と言うか他の作業をしていたためSSに手間取っていたら、いつの間にかMBSでのコードギアス放送時間を過ぎていました。まぁ、自分の住む地域では関係のないことなんですが……。
 24&25話のレビューは、視聴次第、行いたいと思います。楽しみですねぇ、いやほんとに。

 さて今日は、日付では結局1週間も空けてしまったパルフェSSの続きを。
 タイトルを見てもらえばわかると思いますが、今回は中編です。書きたいシチュエーションを好き放題に入れていったら、まさかまさかの3部構成になってしまいました。里伽子との会話が弾む弾む……。

 感覚としては、前編が恵麻+かすり、中編が里伽子(+玲愛)、後編が玲愛+恵麻となっております。後編は+と言うよりはVSですね。この対決を書きたいがために、やたらと紆余曲折したような。
 次回の更新は……いつになるかわかりません。またまた1週間後くらいになる、かも。

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 01(前編後編)・02(前編、中編、後編)

パルフェ 02-2.「仁が右手をケガしたら (中編)」

『仁くん、仁く~ん。平気? 大丈夫? 夕ご飯、ちゃんと食べた? まだなの? どう、食べれそう? 美味しそう? お腹いっぱいになりそう? ほんとはすぐにでも姉ちゃんが行ってあげたいけど、かすりちゃんがダメだって~。どうして~?』
「い、いや、それはほら、姉さんの体を気遣って……」
『姉ちゃん、仁くんのためだったら倒れたっていいのに~』
「いや、それは問題発言だろ、総店長」
『それで誰なの? かすりちゃんが言ってた助っ人って。由飛ちゃん? 明日香ちゃん? それとも……まさか、かすりちゃん自身?』
「えーと……企業秘密ということで」
『どうして~? 姉ちゃんに言えないような相手なの?』
「だって姉さん、知ったらその相手にいろいろと問い詰めるだろ? どんなことしてあげたのか、とか」
『それは……そうだけど』
「……そうなのかよ」
『でもでも、だからって~』
「とにかくさ、こっちは何とかやってるから。姉さんも早く寝なよ。明日の昼ご飯は楽しみにしとくから」
『う、うん……』
「それじゃ、お休み」
『あ、ちょっ……』
 プツッ。
「ふぅ~……」
 半ば強引に会話を終わらせると、仁は深々とため息をついた。
 何だか、どっと疲れたような気がする。
 これは食べ終わった後も電話しないと収まらないなと思いながら左手でケータイを畳んでいると、キッチンからいい香りが漂ってきた。
 先ほど部屋に来てくれた人物による晩ご飯が完成しつつあるのだろう。
 聞き慣れた機械音が聞こえてくるのはいささか気がかりだが……。
「って、全部冷凍食品かよ!」
 やがてテーブルに勢ぞろいしたのは、容器を移し変えてもいない、明らかにレンジでチンなアレたちだった。
 スパゲティやラザニアやピザやたこ焼きやピラフや皿うどんやエトセトラエトセトラ……。
 ところ狭しと置かれた料理にはインスタントすらないのが、呆れると言うかいっそ感心すると言うか。
 要するに、作り手にとっては最小限の労力で手軽に済まされたわけで。
「文句言わないの」
 スプーンやフォークはまだしも箸はどうしようかと考えていると、本日の料理人が顔を出した。
 ファミーユの元フロアチーフにして仁の元同僚にして元同級生、夏海里伽子。
 彼女こそが、かすりの要請した“助っ人”だった。
 自ら言い出して里伽子に頼む辺り、かすりの思惑やニヤケ顔が容易に想像できてしまうのだが……。
 それよりも気になったのは、里伽子がその依頼を引き受けたことだった。
 そして、あろうことか冷凍食品以外のメニューを用意していないことだった。
 別に、料理ができないわけではないはずなのに……。
「そこまで手を掛けてあげる必要がないから」
 表情に疑問符が出ていたのだろう、里伽子は先回りしてそう答えると、仁の対面に腰を下ろした。
 一人分だけ持ってきたコーヒーのマグカップを、静かに傾け始める。
「これなら自分が用意するのと同じなような……」
「一応、頼まれた身だから。既成事実ぐらい作っておかないと」
「……違う意味に聞こえるぞ、それ」
「それに、必要以上に頑張って作ると、バレたときに恵麻さんが大変でしょ?」
「まぁ……そりゃ……」
 弟としては否定したいところだが、できないとわかってしまうのもまた弟だからであり……。
 かと言ってこんなことでウソをつくのも、気に掛けてくれる恵麻に悪い気がしてしまい……。
 仕方なく仁は、黙って一つ目の料理――湯気の立つペペロンチーノに取り掛かることにした。
 たまにお世話になるお決まりの味が、口の中に広がる。
「へも……」
「口に物を入れたまま喋らない」
「……んくっ。でも、どうして断らなかったんだ? 忙しいんだろ?」
 一息で飲み込んでから、頼んでもなかなか店に来てくれない常連客に尋ねてみる。
 里伽子は仁の顔を見ると、つまらなそうにカップを置いた。
「消去法よ」
「消去法……?」
「家庭教師でもないのに明日香ちゃんを夜まで拘束できない。恵麻さんは最初から選択肢にないし、かすりさんは首謀者。由飛さんは……あの性格だから料理は作ってくれそうだけど、腕のほうがどうかわからないから」
「働き始めてからしばらくは、飲み物も満足に作れなかったからなぁ……」
「食べたことないの?」
「食べさせてやったことはあるけど」
「食べさせて……?」
「料理を、だからな? 手段を言ってるんじゃなくて」
「ふーん……」
「と、とにかく、そういう判断からお前が渋々来た……と?」
「そうなるわね」
「……否定しろよ」
「事実だから」
「心配だったから……くらい言っても、バチは当たらないと思うんだが」
「『心配だったから』。これでいい?」
「あのな」
「……たかが一週間のケガじゃない。すぐに治るんでしょ?」
「たぶん、な……」
「たぶん、か……」
 ふと見せた寂しげな表情に、仁は気付かなかった。
 顔を上げたときには、いつもの里伽子に戻っていたから。
「仁の交友関係って、案外少ないから。すぐあたしにお鉢が回ってくる」
「お前に言われたくない。だいたい、ファミーユ以外にもいるだろ。例えば……」
「例えば?」
「……大学のやつらとか」
「休学中の学生が捻挫くらいで救援要求をできるっていうなら、止めないけど」
「あ、後は……ちょっと待ってくれ、思いつかないわけでは決して……」
「一人……いるにはいるけど」
「一人? 誰だよ、それ。……いや、思いつかないわけでは決して……と言うか、何でお前が……」
「呼ぶ?」
「……だから誰だよ」
 仁の問いには答えず、里伽子はケータイを取り出すと電話を掛け始めた。
 会話は二言三言、交わされただけで切れてしまう。
 里伽子は右手でケータイをしまい、
「すぐに来るって」
「…………」
 本当に、誰なのかわからない……と思う。
 首を捻りながら、それでも二つ目の料理――薄っぺらいお好み焼きに手を伸ばしていると、里伽子は仁に聞こえないよう、小さく呟いた。
「……フェアじゃないから」
 それは、誰に向けられた言葉だったのか。
 発した本人は答えを出そうとせず、室内にはただ沈黙と、食事の音だけが続いていく。
 けれどそれは、ほんの数瞬でしかなかった。
「ピンポーン……」
 来た。
 里伽子の言った通り、すぐに。
「はい、空いてます」
「お、おいおい……」
 家人の許しもなく里伽子がそう言うと、やはり家人の許しもなくドアが開かれた。
 夜の闇、その向こうに立っていたのは……仁にとっては、意外な人物。
「……玲愛?」
 誰あろう、キュリオ3号店のチーフ、花鳥玲愛だった。ちなみに私服姿だ。
 なるほど、部屋にいたということなら納得できる。彼女の住まいは、仁のすぐ隣なのだから。
 もっとも、彼女がライバル店の店長宅へ素直に来たのは、少々不可思議な事態ではあったが……。
「おじゃましま~す。……って、どうしたの? 二人で」
「ちょっと、ね」
「うわ、何その冷凍食品の山」
「……ちょっと、ね」
「あぁ、仁、右手ケガしたって里伽子から聞いたけど……」
 ごくごく自然な仕草で、玲愛は部屋へ上がりこんでくる。
 驚きと呆れを混ぜながら、仁は食べる手を止めて言った。
「……何で来たんだ?」
「ご挨拶ね。ファミーユの店長がどんな有り様になったか見に来たんじゃない。まぁ、戦力ダウンにはならないだろうけど」
「お前も、心配だったからとは言ってくれないんだな」
「『心配だったから』。これでいい?」
「つくづく似てるよなぁ、二人は!」
 いっそ清々しいくらいに。
 先日、部屋の鍵を紛失した一件以来、お互いにマジメ人間としてのシンパシィでも感じたのだろう。
 いつの間にか里伽子と玲愛は、ケータイの番号を交換したり名前で呼び合う仲になっていた。
 里伽子にできた同性の友達を歓迎する気持ちはあるものの……その結果が此度の到来となると、あまり祝福はできない。
 どうもこの二人に挟まれると、言い知れぬ息苦しさを感じてしまって……。
「それで、どれくらいで治るの?」
 里伽子の左隣、仁の右隣に座ると、右手の包帯を見ながら玲愛はそう聞いてきた。
 一週間、と答えると、あからさまに残念そうな顔をしてみせる。腹立たしい。
「そっか……里伽子は仁の世話をしに来たんだ」
「一応」
「それで……えーと、これは……」
 何とも異様な食品群の前に、言葉を失くす玲愛。
 仁は冷め始めているピザを差し出しながら、
「どうです、お一つ。……何か、昼間にもこんな会話をした気がするけど」
「何の話?」
「こっちの話。さぁさ、遠慮せずに食べろ。里伽子の金だから」
「誰がそんなこと言ったの?」
「こっち持ちかよ!」
「……太るからイヤ」
「そう言えば、里伽子は食べないのか?」
「あたしはもう済ませてきたから」
「だったら、何でこれほど盛り沢山……」
「玲愛も食べると思って」
「計画通りか」
「そりゃあ、お夕飯はまだだったけど……。しょうがないなぁ……」
 渋々ながらも、玲愛は料理にスプーンとフォークと箸を伸ばした。
 金髪の美少女が冷凍食品を食すという奇妙な光景が続くこと、十数分。
 コーヒーを飲み終えた里伽子は、さも今、思いついたように声を上げた。
「玲愛」
「はに?」
「口に物を入れたまま喋らない」
「……んくっ。何?」
「作ってあげてくれない? 仁の朝ご飯」
「…………」
「はぁ!?」
 先に驚いたのは仁のほうだった。
 まさか、里伽子からそんな提案が飛び出てくるとは。
 玲愛はしばし呆然としていたが、すぐに思い直すと里伽子に体を寄せた。
「……どういうつもり?」
「消去法よ。他に人手がなかったから。仁にこんな料理を食べさせ続けるわけにはいかないでしょう?」
「里伽子が作ってあげればいいじゃない」
「…………」
「貸し一つ、ってこと?」
「どうとでも」
「……わかったわよ」
「ちょ、ちょっと待……」
「仁」
 勢いよく仁に向き直ると、玲愛は普段と同じ、はきはきとした口調で告げた。
 ほんの少しだけ、自分でも気付かないほど小さな明るさを上乗せしながら。
「和風と洋風、どっちがいい? 私は和風派だけど」
「はぁ!?」
「卵焼きは醤油? 砂糖? そうだ、味噌汁の出汁も確かめたほうが……」
「…………」
 こうして、見る見るうちに決まってしまった、料理番の行方。
 このことが、後々大きな抗争を引き起こしてしまうのだが……。
 今はまだ、誰も知る由はなかった。


  To be continued...

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2007/07/29 03:23 | Comments(0) | TrackBack() | SS

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