ペット 空影 -karakage- 忍者ブログ
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2024/05/20 00:23 |
【SS】 コードギアス 07.コーネリアの日常① 「ホワイトデーにて」

 昨日と言ったのに今日になってしまいました。遅くてすいません。コードギアスSS、更新です。
 今回はコーネリアを。時事ネタであるホワイトデーも絡めてみました。時期的には、スザクがユーフェミアの騎士になった後を想定しています。

 コーネリアは自分の中で重度のシスコンキャラが決定済みなので、もちろん話もそっち方向で。
 書くのに苦労したのはユーフェミアです。気が付くと腹黒になってしまい……。最後の良心、ということで、極力本編そのままにしてみました。まぁ、今後のSSで壊れていく可能性はあるんですが。

 次回はおそらくカレンです。一応、次の土日を予定。
 予告通り、ガウェインのパイロット関係かと思われます。

拍手[1回]


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コードギアス 07.コーネリアの日常① 「ホワイトデーにて」

 エリア11、総督用執務室。
 普段は誰かしらが控えているべき場所も、今は、部屋の主によって人払いがされていた。
 主――コーネリアは一人、革張りのイスに腰掛け思案している。
 手元には、一台のノートパソコン。
 様々な品物の画像が、モニターを埋め尽くしている。
「……わからん」
 ブラウザを閉じると、コーネリアは息をついた。
 イラ立たしげに眉間を揉む。
「いったい何を送ればいいんだ……?」
 通販サイト、だった。
 さらに言えば、ホワイトデー、だった。
 遠征が相次ぎ、気が付けば当日が目前になってしまっている。
 まだ、何も考えていない。
 ユーフェミア――ユフィへのお返しを。
 本来、総督である自分がイレヴンの慣習に従うはずなどないのだが……仕方がない。
 ユフィからチョコレートをもらってしまっては。
 しかも手作りのものを。
 コーネリアとしては、当然、拒むことなどできなかった。
 受け取ったのであれば、返さなければならない。
 でないと、ユフィが悲しむかもしれない。残念がるかもしれない。
 このときばかりは姉としての素顔を覗かせ、コーネリアは慣れないプレゼント選びをしていた。
 自分も手ずから菓子を作ってやりたいところだったが、そんな時間も技術もない。
 租界へと買いに行くこともできず、結果、こうして通販に頼ることにした。
 ユフィが喜びそうなものをと、さきほどから考えを巡らしているのだが……。
「むぅ……」
 あまりピンとこない。
 最後の試みも、やはり徒労に終わるようだ。
 コーネリアは、自分で決めるのを諦め、ユフィ本人に選ばせることにしていた。
 驚かせてやりたい気持ちもあったが、無難な線ではあるだろう。
 今から注文すれば、ホワイトデーに間に合う。
 人払いをしたのも、この後、ユフィが来る手はずになっていたからだった。
 さすがに、姉妹の会話をギルフォードたちに聞かせるわけにはいかない。
「……さて」
 ユフィはどういったものを選ぶのだろう。
 おぼろげながらも浮かんでいたアイディアを、ユフィの好みに当てはめてみる。
 食べ物か、アクセサリーか。花ということもある。
 あるいは服、か。
 うん、そうだな、それがいいかもしれない。ユフィに似合う服を。
 外出の際にでも着てもらえば……。
「…………」
 そこで、ぴたと思考が止まる。
 待て。
 仮に、例えば、万が一。
 自分の送った服を着て、街を歩くとして、その隣に……。
「…………っ!」
 瞬間、神経が焼き切れる。
 思わず突き出たコーネリアの拳は、目の前のパソコン画面をくだいていた。
 まずい、と、彼女にしては珍しく慌ててしまう。
 こうして壊した器物は、すでに両手では数え切れなくなっていた。
 軍のトップたる自分がこの体たらくでは、部下への示しがつかない。
 もちろん、こうなる理由はわかっているのだが……。
 あえて考えないようにしていた。
 ひとたび考えると、その数秒後には同じ事態になっているから。
「忌々しい……」
 不意に漏れた言葉は、自分自身へか、それとも、他の誰かに向けられた言葉か。
 痛みの残る右手はそのままに、コーネリアは、ぎしとイスを軋ませた。
 ダメだ。
 振り払おうとしても、どうしても脳内の雑音が鳴り止まない。
 近頃は、書類等の事務仕事も手につかない有り様だった。
 いっそのこと戦闘でも起こってはくれないか、などと、物騒なことまで考えてしまう。
 戦場においてのみ、本来の自分が取り戻せるような気がする。
 それに、命令系統が自分からは離れているものの、ヤツを危険に追いやる可能性もある。
 そう、あいつを。
 あのイレヴンを……騎士にまでなった……ユフィを奪った……。
「…………っ!」
 拳が、今度はパソコンを残らず破壊しようとしたとき。
 秘書官からの通信が、それを押し留めた。
 待ちわびた人物の到来。短く『通せ』と伝える。
 ほどなくして、扉が開いた。
「遅くなりました、お姉さま」
 上気した頬のユフィが、部屋へと入ってくる。急いで来たのだろう。
 コーネリアの唇に、自然と微笑が宿る。
 何でもないというふうに、コーネリアは答えた。
「気にするな」
「あら、このお部屋、何だか焦げ臭いような……」
「……気にするな」
 素早く、ぶすぶすと煙を上げるパソコンを閉じる。
 ユフィの前では、あくまでいつも通り冷静な姉として振舞っていた。
「それでお姉さま……いえ、総督」
「お姉さまでいい。二人しかいないのだからな」
「はい、お姉さま。あの、ご用事というのは……」
「うん、それなんだが……」
 通販の品々を見せようとして、すぐに、自分が中破させてしまったことを思い出す。
 仕方ない、口頭にしよう。
 そう思い、コーネリアはユフィへと向き直り……。
「…………」
 気付く。
 ユフィが、何かを胸に抱えている。
 大事そうに。
 小さな箱のようだったが、綺麗にリボンがかかっている。
 さっきまでの微笑みはどこへやら、コーネリアはピクピクとこめかみを痙攣させた。
 恐る恐る、尋ねる。増大する不安とともに。
「ユフィ、その箱は……」
「え? あ、こ、これですか? いえ、何でもないんです。ほんとに」
「…………」
 真っ赤になって、箱を体の後ろへと隠すユフィ。
 不安は確信に変わっていた。
「……枢木か」
「えーと……その……」
「ヤツなんだな?」
「は、はい。ちょっと早いけど、お返しにって、さっき……」
「あげたのか!? チョコを!? 枢木にも!?」
「……はい」
 呟くと、ユフィは俯いた。
 それは、姉の激昂に怯えたというよりも、照れのためといったほうがいいだろう。
 そのことが、コーネリアの沸騰をさらに激しくする。
「ヤツは何をくれたんだ……?」
 それでも、コーネリアは懸命に爆発を抑える。
 ますます照れた様子で、ユフィは顔を振った。
「だ、ダメですよ。いくらお姉さまでも、見せるわけには……」
「……そうか」
「お姉さま……?」
 不自然なほど無表情を形作り、コーネリアは立ち上がった。
 机を避け、扉へと歩き始める。
「ユフィ、実を言うとな、お前へのホワイトデーを考えていたんだ」
「そ、そうなんですか……?」
「迷っていたが、どうするか今決めた」
「はぁ……」
「枢木をお前の騎士と認めてやろう。それが、私からのプレゼントだ」
「ほ、本当ですか!?」
「……嬉しいか」
「はい! ありがとうございます、お姉さま」
 ユフィの笑顔には答えず、コーネリアは彼女の隣を通り過ぎる。
 独り言のように、その口から言葉が漏れていた。
「騎士ならば……騎士であるならば……申し込まれた決闘は受けざるを得ない……」
「……え?」
「それが騎士の定め……騎士の掟……」
「お、お姉さま?」
「戦場など生ぬるい……私がこの手でヤツを処刑してやろう……」
「お姉さま……?」
「ユフィの目の前でな……」
「お姉さま!?」
「くくくくくく……」
 いつしか満面の笑みを湛えたコーネリアは、ユフィの制止も聞かず直進し続ける。
 ホワイトデー、その数日前。
 総督府は、一時騒然となった。
 ご乱心だ、という叫びが、あちこちで聞こえたという。


  END

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2007/03/14 14:43 | Comments(1) | TrackBack() | SS

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コメント

僕の中のコーネリアとはちょっと違うかな(^_^;)
posted by SEVENat 2007/03/14 16:21 [ コメントを修正する ]
Re:無題
オロオロしっ放しのコーネリアというヴァージョンも考えたんですが、お話がうまく運ばないんで却下にしました。
今後は、ルルーシュと妹自慢合戦みたいなものをやってもおもしろいかも。
2007/03/16 21:14

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